骨盤底筋群の柔軟性を高める「ヨガの呼吸法」とは

UI(尿もれ)には、骨盤底筋群という筋肉が重要な関わりを持っています。カチカチに硬くなっていたり、逆に緩みすぎたりしていると、どちらもUI(尿もれ)につながる可能性があります。

骨盤底筋群を緩めたり緊張させたりする「ヨガの呼吸法」をご紹介します。吸う息で緩め、吐く息で緊張させ刺激していく呼吸法です。骨盤底筋群の柔軟性を高めるの効果が期待できます。

【骨盤底筋群の弾力性を高める「ヨガの呼吸法」の行い方】

①仰向けになります。

膝を立て、足幅は骨盤幅くらいに整え、足先と膝の向きを前向きに揃えます。

踵は股関節に違和感のないところまで引き寄せてください。

両手の平を下腹部に添えます。肩はリラックスし、胸を柔らかく開きます。

②鼻から息を吸って下腹部を緩めてふっくら膨らませます。

③鼻から息を吐きながら下腹部を凹ませます。

両手の平で、呼吸に合わせて下腹部が膨らんだりへこんだりする様子を感じながらやってみましょう。鼻から吸って鼻から吐く呼吸は、より深い呼吸が取れますが、お腹がぺたんこになるところまで息をしっかりと吐き切ることで、より下腹部が刺激されるため、吐く息は口から声を出しながら行うのがおすすめです。

慣れてきたら、この呼吸に骨盤の動きを加えてみましょう。息を吸うときに下腹部をふっくら膨らませながら、骨盤を少し前に傾けます。腰と床の間の隙間が広がります。吐く息では骨盤を後ろに傾けて、腰を床に押し付けるように、下腹部を背中の方へ引き込みます。次は、息を吐くときに足裏で床を押すようにしてみましょう。そうすることで、内腿の筋肉が働いて、骨盤底筋群や下腹部を引き込む力を助けます。

2〜3分間続けてみましょう。最後の一息を吐き切ったら、身体の力を緩めてリラックスします。下腹部あたりに広がる充実感、温かさなど、身体に残る感覚を感じてみましょう。

骨盤底筋群を鍛えるヨガのポーズ5選

骨盤底筋群は体の奥にある筋肉で、触れることはできず、意識して動かすことも難しいため、最初はなかなか感覚がつかみづらいかもしれません。やがて分かるようになってくるので、諦めず継続して行いましょう。

また毎日5分や10分などできる範囲で習慣化することが望ましいですが、体調のよくないときは控えるようにしてください。骨盤底筋群は繊細な筋肉なので、負荷のかけすぎも良くありません。心地いいと思える程度の強さで行い、不快な痛みがある場合はやめましょう。

【橋のポーズ】

①足先から頭の先まで真っ直ぐにして仰向けになります。

②膝を立てて、足幅は骨盤幅に整えます。

③立てた膝の下に踵がくる位置に引き寄せて、膝と足先の向きを前向きに揃えます。

④両腕を身体の脇に置いて、体側にそわせます。

⑤手の平を床に向け、手先を足先の方向へ伸ばし、肩と耳の距離を遠ざけます。

⑥鼻から息を吸いながら、足裏で床を押して骨盤を床から持ち上げます。このときお尻の方から順番に(仙骨〜腰〜胸の後ろ)、背骨を一つひとつ床から引き上げていくように、丁寧に動かしましょう。

⑦足の裏を肩にしっかりと身体の重みをのせ、体の前面が弓形に天井方向に引き上がっていくのを感じます。

膝と膝の間が開きすぎないように注意しましょう。

⑧姿勢が安定したら、呼吸に意識を向けましょう。

息を吸うたびに、あご先は鎖骨の方に近づいて胸が開きます。

吐く息では足裏で床を押して、骨盤底筋群や下腹部を引き入れます。

3〜5呼吸分ホールドをしたら、吐く息で下腹部を背中の方へ引き入れながら、背骨の上から順番にまた一つひとつの背骨を床に下ろしていくように、丁寧にロールダウンします。

仙骨まで床に下りたら、全身の力を抜いて脱力しましょう。ポーズの余韻を感じましょう。

〈期待できる効果〉

  • 骨盤底筋群を鍛える

  • ヒップアップ

  • 足の付け根の屈折を開き、下半身の血流を改善する

  • 股関節の柔軟性を高める

  • 胸を開いて呼吸を深める

[注意点]

膝が開きやすい場合は、骨盤底筋群がうまく使われないだけでなく、腰を痛める原因にもなるため、注意しましょう。膝の間にヨガブロックなどを挟み込むことで、より分かりやすく骨盤底筋群を使うことができます。また月経中は控えるようにしてください。

【椅子のポーズ】

①足幅を骨盤幅にして立ちます。足先と膝の向きをまっすぐ前向きに揃えます。

②後ろにある椅子に腰掛けるように、足の付け根を後ろに引いていきます。このとき、足先より膝が前に出ないようにしましょう。腰に負担を感じないところまでお尻を引いていきます。太ももと床が平行になるところが最大限の負荷です。それよりもお尻が下がらないように注意します。また反り腰にならないように、下腹部を引き入れます。

③下半身が安定して、余裕があれば両腕を万歳にして頭の上に伸ばします。肩に力が入らないように注意します。

④姿勢が安定したら、3〜5呼吸ホールドします。内腿に意識を向け、足先と膝の向きを揃えた状態を保ちましょう。最後のひと呼吸を吐き終えたら、吸いながら膝を伸ばし、吐く息で腕を下ろします。リラックスしてポーズの余韻を感じましょう。

〈期待できる効果〉

  • 骨盤底筋群を鍛える

  • 下腹部の引き締め

[注意点]

反り腰になるほどお尻を下げすぎないようにします。足の付け根の内側に丸めたタオルなどを挟み込めば、より骨盤底筋群への意識がしやすくなります。

【猫のポーズ】

①四つんばいになります。膝の上に股関節、手首の上に肩がくるようにします。足のつま先を立てて、親指の付け根・膝の内側で床を押しながら、骨盤底筋群や下腹部が引き上がる感覚を感じましょう。

②息を吐きながら骨盤を立たせ(後傾させ)、背骨の下から順番に背中を丸めていきます。猫背の状態で天井を押し上げるようにしながら、視線はおへそに向けます。

③吸う息では骨盤を前傾させ、背骨の下から順番に上体を反らせます。胸・のど・顔を引き上げて視線は眉間に向けます。

④吐く息で下腹部を引き入れながら背中を丸め、吸う息でお腹の力を緩めて胸を反らせ、ひと呼吸ひと動作になるように、呼吸に合わせて3〜5呼吸分繰り返しましょう。息を吐いて背中を丸めるとき、内腿を引き寄せる意識で骨盤底筋群を引き入れます。吸う息ではお尻やお腹の力を緩め、骨盤底筋群を緩めます。

⑤最後に吸う息で背中を反らせたら、次の吐く息で立てていたつま先を寝かせ、足の甲を床に下ろします。足の親指同士を引き寄せ、お尻を踵に下ろし背中を丸めます。無理なくおでこが床に下りそうであれば、そのまま床に下ろして休みます。おでこを床に下ろすと苦しい場合は、両手を重ねた上でおでこを休ませましょう。ひと呼吸ついて、身体の感覚が落ち着いたら、重たい頭が最後になるように、ゆっくりとロールアップで起き上がっていきましょう。

〈期待できる効果〉

  • 骨盤底筋群の柔軟性を高める

  • 身体の循環を助ける

  • 呼吸を深める

  • 背骨の柔軟性を高める

  • 自律神経系の刺激

  • 内臓のマッサージ

  • 骨盤位置を整える

[注意点]

吸う息で上体を反らせるとき、腰を反りすぎないように気をつけましょう。恥骨と顎先を遠ざけるイメージで、椎骨の間を詰まらせることがないように、骨盤から背骨の長さを引き出しながら行います。

【花輪のポーズ】

①お尻を床から持ち上げてしゃがみます。足元は骨盤幅より広めに開き、足先と膝の向きを外向きに開きます。

②胸の前で両手を合わせ、合掌します。肘を膝の内側に当てます。肘で膝を押し、膝では肘を押し返します。頭頂は上に、尾骨は下に、足の裏でしっかりと床を押します。

③姿勢が安定したら、3〜5呼吸ホールドします。

④吐く息で肘と膝を押し合いながら、吸う息でその力を緩めるようにします。最後のひと呼吸を終えたら、全身の力を緩め、リラックスしましょう。ポーズの余韻を感じます。

〈期待できる効果〉

  • 骨盤底筋群の柔軟性を高める

  • 骨盤域の血流を促進する

  • 股関節周りの柔軟性を高める

[注意点]

しゃがんだ姿勢で踵を床につけるのが難しい場合は、踵の下にブランケットなどを敷いて厚みを持たせ、ヒールを履いたような状態を作りましょう。または、お尻の下にヨガブロックなどを入れてその上に腰掛けます。そうするとしっかり床を踏み込めるため、骨盤底筋群によりアプローチすることができるでしょう。

【門のポーズ】

①膝立ちになります。左の足を横へ伸ばし、足裏を床につけ、足先は前に向けます。右足は足先を立てて、親指の付け根で床をしっかり押します。骨盤は、左右の高さを揃え、正面を向けます。揃いづらい場合は、伸ばした左足を少し前に出し、骨盤位置を整えることを優先させましょう。

②息を吸いながら両腕を外から回しあげて頭の上で合掌をつくります。左右の脇腹をしっかり伸ばします。

③吐く息で上体を左へ倒します。先ほどしっかり伸ばした体側は長さを保ったまま傾けていきましょう。左手は左足に添え、右腕は頭の先に伸ばし、右の体側をストレッチします。視線は右肘から天井方向か、首がつらければ正面向きでもかまいません。

④姿勢が安定したら、3〜5呼吸ホールドします。上体が前に傾かないように、また肋骨が開かないように、下半身を安定させます。足の付け根をしっかりと立てて、右のお腹の中の内臓のスペースを広げるように、お腹は縦に伸ばします。吐く息に合わせて内腿の付け根同士を引き寄せるように使って、骨盤底筋群を働かせましょう。

⑤最後のひと呼吸を吐き終えたら、吸う息で右手に引っ張られるように上体を真ん中へ戻していきます。伸ばしている左足を引き寄せ、ひと呼吸ついて、左右の身体の感覚の違いを感じましょう。落ち着いたら、反対側も同様に行います。

〈期待できる効果〉

  • 骨盤底筋群を鍛える

  • 骨盤位置を整える

  • 脇腹のストレッチ

  • 全身の血流を促進

  • 肩こりの解消

[注意点]

骨盤位置は左右高さを揃え、正面に向けたままを保ちます。上体を倒すときに一緒に傾いてしまいがちなので、注意しましょう。

心も身体も。ヨガはアンチエイジングにも効果的!

深い呼吸をしながらポーズをとるヨガは、肩こりや腰痛、むくみなどのマイナートラブルの改善に効果が期待できます。続けていくことで筋肉量が増え、基礎代謝が上がり、健康的で痩せやすい身体づくりにも期待ができます。身体のコンディションがよくなると、心もリラックスし、メンタルやホルモンのバランスが整い気持ちが落ち着けばストレスが軽減され、いつまでも若々しく、ハッピーな日々を過ごす手助けになるでしょう。

【アンチエイジングに効果的なヨガのポーズ・下を向いた犬のポーズ】

①四つんばいから足のつま先を立てて、立てた踵にお尻を下ろします。

②両手でしっかりと床を押しながら、お尻を踵から持ち上げて、全身で大きな三角形を作ります。膝が曲がっていても、踵が床から浮いていてもいいので、下半身にしっかりと体重を乗せ、手の平で床を捉え、上半身を気持ちよく伸ばすことを優先させましょう。

③姿勢が安定したら3〜5呼吸ホールドします。

④最後のひと呼吸を吐き終えたら、四つんばいに戻ります。

⑤足の甲を寝かせて、足の親指同士を引き寄せ、踵の上にお尻を下ろし、子どものポーズでお休みします。頭の方へいった血流が元に戻るまで少し静かに待ちましょう。このポーズは頭が下を向く「逆転」のポーズの仲間ですが、重力と逆転することで、関節や内臓にスペースができ、身体の機能が向上します。また頭の方に血流がいくことで、リフレッシュ効果が期待できます。

〈期待できる効果〉

●全身の血流促進

●身体の背面のストレッチ

●気持ちのリフレッシュ

[注意点]

頭を下に向けると立ちくらみが起きやすい人は、長時間キープしないように注意してください。

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(プロフィール)

AJYA全日本ヨガ協会認定シニアインストラクター 福島 麻衣

2010年よりAJYA(一般社団法人 全日本ヨガ協会)認定校をはじめ、都内を中心にヨガ指導を開始する。ヨガスタジオでクラスを受け持つほか、ヨガインストラクター養成講座の講師も担当。また学校でのヨガの授業や、地域の児童館でのママ&ベビーヨガのインストラクターを務めるなど、活躍の場は広い。「社会や生活と深く結びついた場所でヨガの魅力を伝える」ことがライフワーク。