心因性頻尿とは

大事な試験や試合、会議やプレゼンテーションなどの直前に、緊張してトイレが近くなった経験はありませんか?また映画館に入る前にそれほど尿意がなくても、念のためトイレに行っておこうと思う人は多いのではないでしょうか。

緊張からトイレが近くなったり、心配でトイレに行くということは誰にでもあることです。しかし緊張や心配が頻繁に起こると、何度もトイレに行かないと気がすまなくなってしまいます。このような心理的な緊張や不安、ストレスが原因で起こる頻尿が心因性頻尿です。

原因としては、例えば、過去にひどい尿失禁をして恥ずかしい思いをしたり、膀胱炎になって我慢しない方がいいと指導を受けたりしたことから、頻回にトイレに行くようになり、その習慣が度を過ぎてしまったというようなケースもあります。まじめで比較的神経質な方が心因性頻尿になりやすい傾向にあるようです。

またリラックスしているときや、何かに集中しているときは、トイレのことが気にならないという特徴もあります。心因性のため、夜眠っている間は症状がない場合が多く、起床時の尿量も正常です。

心因性頻尿の診断方法

泌尿器科を受診する場合、「排尿日誌」を記録しておくのがおすすめです。排尿日誌は、起床から翌朝までの排尿時刻や排尿量などを書き留めておくもの。排尿状態を把握できるため、心因性頻尿以外にも頻尿を引き起こしている原因があるかどうかを、医師が診療する際に役立ちます。3日分(72時間分)のデータがあれば、診療がよりスムーズに行えるでしょう。

「日中は頻尿なのに、就寝後、睡眠中には起床時まで1回も起きない」「日中は50~100ml/回で排尿しているが、睡眠中に起きたときや起床時の排尿量は300ml〜400ml(正常な人と同じ位)」ということが分かれば、心因性頻尿の可能性が高くなります。

泌尿器科で問題がない場合は、 心療内科や精神科などの専門医での受診を

排尿日誌の記録が正常な場合(夜間睡眠中は膀胱に尿が正常にためられていることなど)、膀胱の機能に異常がないことが判断できます。このように泌尿器科で問題がないときは、心療内科や精神科の専門医を受診しましょう。

また以下のような生活習慣や環境の見直しを行うことも、心因性頻尿を改善するためには有用です。

利尿作用のある飲み物の摂りすぎに注意する

コーヒーや緑茶、ビールといった利尿作用のある飲み物を摂取しすぎると頻尿になることがあります。頻繁に飲む習慣のある方は控えるようにしましょう。

外出時にはトイレの場所の確認を

外出する場合、どこにトイレがあるのかを確認しておくと「いつ、トイレに行きたくなっても大丈夫」という安心感が得られます。

リラックスできる時間を作る

気持ちをリラックスさせて、緊張を和らげる時間をつくりましょう。心に不安をかかえていると、ついトイレのことばかり考えて、さらに尿意が増す場合も。お腹を温めながら「いつでもトイレに行ける」とイメージし、自分を安心させましょう。

心因性頻尿は、ストレスや不安などを和らげつつ、膀胱に尿をためてから排尿するように習慣づけることで改善します。ただし「頻尿」そのものの原因は、過活動膀胱、糖尿病や飲水過多による多尿、膀胱炎など様々です。気になる症状がある場合は別の病気が隠れていないか確認するためにも、必要に応じて専門医に相談しましょう。

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(プロフィール)

泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生

1983年、東京女子医科大学 医学部医学科卒業。同大泌尿器科等を経て、2011年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会認定医、ロボット支援手術認定医、日本排尿機能学会理事、日本女性骨盤底医学会理事、日本骨盤臓器脱手術学会理事、日本性機能学会理事、日本間質性膀胱炎研究会幹事 ほか。