ADLは、病院や介護施設、介護認定調査の際で日常的に使用する言葉です。

例えば、このような経験はないでしょうか? 両親の入院の際「ADLはどれくらいですか?」と看護師から質問を受けたり、「ADLが低下しているのでリハビリしましょう」と医師から説明されるような場面です。

分かりやすく表現すると「ADL=自分で生活できる力」

付け加えるならば「自分で生活できる力」とは、経済力以外の身体動作・認知能力・コミュニケーション能力を指しています。 もう少しADLについて詳しく説明していきましょう。 ADLとはActivities of Daily Livingのことで、Aはアクティビティー(動作)、DLはデイリーリビング(日常生活)の意。具体的には「歩行・階段の昇り降り・トイレ・入浴・食事・着替え・身だしなみ」など、日常生活を送るために最低限必要な能力のことを指します。本来はリハビリテーション分野の言葉ですが、近年では、要介護認定の調査項目やリハビリの効果判定など、ご高齢者の生活機能の尺度として用いられることが多くなっています。

またADLはおおまかに、基本的ADL(BADL)と手段的ADL(IADL)に分類されます。BADLは基本的な生活動作を、IADLは複雑な生活動作を示しています。BADLが歩行や食事そのものの動作を指すことに対して、IADLは、“自分で番号を調べて電話をかけられるか”“適正な量の薬を規定の時間に飲めるか”など、「買い物・料理などの家事や、外出(交通機関の利用)、電話対応などのコミュニケーション、服薬管理、金銭管理」などの複雑な日常生活動作のことを指します。

「ADLセルフチェック」をやってみましょう !

介護される対象者本人はもちろん、同居のご家族の方(介護者)でも簡単に活用できる「ADLセルフチェック」。 *以下のチェック項目は介助や介護を必要とせず「ADL=自分で生活できる力」を評価することができます。該当する数が多いほど介助や介護が必要となります。あくまで目安ですが、介護予報の参考にしていただければ幸いです。

【基本的ADL】

  • 床からの立ち上がりが難しくなった

  • 机や柱につかまらないと家の中で移動できなくなった

  • 階段の昇り降りが転びそうで危ない

  • 食事をこぼしながら食べるようになった

  • トイレに間に合わず漏れるようになった

  • 着替えやファスナーやボタンに時間を要するようになった

  • 入浴・歯磨き・髭剃りなど身なりを整えなくなった

【手段的ADL】

  • 献立を考えたり、食事の準備をしなくなった

  • テレビやエアコン、ガスの取り扱いを忘れることが多くなった

  • 家計管理や金銭勘定が曖昧もしくはできなくなってきた

  • 目的の人へ電話をかけたり、受けたりできなくなってきた

  • 内服薬の飲み残しが多くなってきた

  • 電車やバスを使った外出ができなくなった

  • 目的の商品を近所で買ってくることができなくなった

「ADLセルフチェック」の対策とアドバイス

1.基本的ADL・手段的ADLのどちらも該当項目無し

→ひとりで生活できる力は備わっています。このままの状態を維持できるようにフレイル予防(食事と運動、社会参加)に努めましょう。

2. 基本的ADL・手段的ADL合わせて該当項目が6項目以下

→この時期は、補助具(手すり・段差を無くす住宅改修・ポータブルトイレ・吸水ケア製品など)の活用を検討しましょう。65歳以上なら、市区町村の役所で相談の上、介護認定の申請をおすすめします。なぜなら介護認定審査から要介護認定を受けるまでに最低でも1〜2ヶ月を要するからです。今後、介護の必要性が高くなってから介護申請するよりも、この時期に相談しておきましょう。介護認定のレベルによって異なりますが、住宅改修や補助具のレンタル費用などの補助サービスを受られる可能性があります。  高齢者だけで生活している場合は、緊急用アラームの設置、頻回な訪問や電話での安否確認も必要です。

3. 基本的ADL・手段的ADL合わせて該当項目が7項目以上

→この時期、介護認定申請は必須です。介護負担が増えてくる段階のため、ご家族だけで頑張るのではなく、デイサービスやショートステイ、訪問介護、訪問入浴などのサービス をフル活用しましょう。

最近は、高齢者施設の入所を検討される方が増えています。しかし、必要な時すぐに 入所することは難しく、高額で人気施設は順番待ちとなります。

早い段階から入所の可否や希望について、ご両親と話し合い、準備しておきましょう。

自分らしくHappyに生活するために

将来の介護不安を感じている40~50歳代女性の皆様に向けて、介護予報として知っておきたいADLについてお話ししてきました。最後に、「ADL=自分で生活できる力」を知らないうちに下げてしまう過介護について触れておきましょう。

昨今問題となっているのが「できるけどしない(やらない)ADL」です。例えば、娘(介護者)が母親(被介護者)に“転ぶと危ないからそこに座っていてね。ご飯の支度も、掃除も、全部私がやるから”と、介護者が被介護者に様々なことを介護しすぎて起きる現象のことをいいます。このような過介護は、被介護者の自立を妨げ、身体機能を衰えさせることにつながりかねません。

私たち看護師が、看護や介護をする上で心がけているのは「患者さんの残存機能を低下させないようにお手伝いすること」です。実は、日常生活の全てをお手伝いする方が簡単ですし、短時間で済みます。しかし、それでは患者さんのできる力を看護の力で奪うことになります。介護依存に導いてしまっては、誰もHappyにはなれません。

患者さんが、自分の足で歩けるならペースを合わせること、UI(尿もれ)があっても不快感の無い専用ケア製品を使用しながらトイレで排泄する習慣を維持すること。出来なくなったことよりも、出来ていることに注目して喜び合えること。これらの積み重ねが、結果的に介護する側にとっても介護される側にとっても、その人らしくHappyに生活するための礎となります。 終わりに40歳代看護師の私から提案です。

毎年両親のお誕生日に介護予報をチェックし、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか?

今回の記事は、その時のドレスコードにしていただけると幸いです。

人生100年時代、40〜50歳代の女性はもっとHappyで素敵に輝く力があると信じています。 一緒に頑張りましょう!

東葛クリニック病院

看護部 主任 皮膚・排泄ケア認定看護師 特定看護師(創傷管理分野)

浦田 克美 1996年、東京警察病院看護専門学校卒業。

2007年、日本赤十字看護大学 看護実践・教育・研究フロンティアセンター認定看護師教育課程 皮膚・排泄ケアコースを卒業、翌年、皮膚・排泄ケア認定看護師免許を取得。

2009年には、おむつフィッター3級を取得。

2021年10月現在、東葛クリニック病院で勤務。

2015年~ 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 評議員

2017年 特定行為研修(創傷管理分野)修了

2021年 日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会 評議員  はぴなぴチャンネル:排泄に問題があっても自分らしくHappyに生活できるよう大人用紙おむつの選び方や正しい使い方を看護師の視点で発信しているチャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCgonTHiL8Tfnq0M46wcGv5A