頻尿の原因と簡単セルフチェック

一般的に、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿、就寝中に1回以上尿意でトイレに起きることを夜間頻尿といいます。ただし、1日8回以上でも、夜中に1回起きても困っていなければ頻尿にはあてはまりません。平均的な体格の女性の正常な尿を感じる膀胱の容量は200mlから400mlほどですが、通常、ある程度(100~200mlほど)膀胱に尿が溜まると、尿意をもよおします。

頻尿は、病気が原因の場合もありますが、水分の摂り過ぎ緊張などが原因のことも少なくありません。また夜間頻尿では、睡眠障害になったり、特に高齢者が寝ぼけた状態でトイレに行って転倒するといった心配も出てきます。 頻尿の原因のひとつで、膀胱が過敏になり、尿が十分にたまっていなくても、自身の意思とは関係なく膀胱が収縮する状態を過活動膀胱といいます。過活動膀胱の症状は、「過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive Bladder Symptom Score)」という質問票を用いてチェックすることができます。

過活動膀胱症状スコア(OABSS) この1週間のあなたの状態に最も近いものを、ひとつだけ選び数字を〇で囲んでください。

出典 : 過活動膀胱診療ガイドライン[第2版]:日本排尿機能学会編集、2015年、リッチヒルメディカル, P105.©日本排尿機能学会 セルフチェックの結果は、いかがでしたか?

次の❶、❷の両方にあてはまる方は、過活動膀胱が疑われます。また合計点数により、過活動膀胱の重症度が判定できます。

出典 : 過活動膀胱診療ガイドライン[第2版]:日本排尿機能学会編集、2015年、リッチヒルメディカル, P105.©日本排尿機能学会

※この結果はあくまでも目安です。過活動膀胱以外の病気の可能性もありますので、自己判断はせずにこの結果を持参の上、医師に相談しましょう。

正確な診断は、医師の問診や、尿検査、超音波検査による残尿の量や膀胱の状態等を調べた結果と合わせて行われます。

※合計点の高い低いにかかわらず、症状に気になる点がある方は医療機関にご相談ください。 尿トラブルには頻尿以外にもさまざまな症状があります。各症状から疑われる病気には次のようなものがあります。

  • UI(尿もれ)する→切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁 など   

  • 膣から何かが下がってくる感じがする→骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸脱)

  • 尿が白濁している→膀胱炎 など  

  • 残尿感がある→膀胱炎、神経因性膀胱 など (本文)

頻尿はQOL(生活の質)を下げるだけでなく、思わぬ病気のサインということもあります。セルフチェックで過活動膀胱が疑われた場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

過活動膀胱セルフチェックでわかる対処法

セルフチェックで過活動膀胱が疑われ、症状で困っているようなら、まずは病院へ行くことをおすすめします。また日常生活においても、次のようなことを見直しましょう。

【過活動膀胱の場合】

水分は適量を摂取する:目安は1日1. 0~1.5 リットル

頻尿の症状があると、水分摂取を控えがちですが、水分不足になると脳梗塞や心筋梗塞などを起こしやすくなります。ただし、水分を摂り過ぎても血液はサラサラにはならず、脳梗塞や心筋梗塞の予防にはなりません。適量の摂取が大切です。

●避けた方がよい飲食物

利尿作用や刺激のあるもの、酸化ストレスを与えるものは避けた方がよいでしょう。次に挙げる飲食物は摂り過ぎに注意してください。

  • コーヒー、紅茶などカフェインを含む飲みもの

  • アルコール

  • 塩分の多い食べ物 

など  

膀胱の筋肉をストレッチ(膀胱訓練)

尿意を我慢する練習を短い時間から始めて、少しずつ時間を延ばしていく膀胱訓練です。膀胱に尿をたくさんためておけるようになれば、症状を改善させることができます。

◎やりかた

①尿意があっても、1分間程度トイレに行くのを我慢します。

②1分間我慢できるようになったら、次に5分、10分と少しずつ時間を延ばしていきます。

・尿意を感じた時に毎回行う必要はありません。

・訓練を続けていくことで、トイレに行く間隔が2~3時間になることを目標とします。毎日少しずつ継続してトレーニングすることが大切です。

骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋トレーニングを日常生活に取り入れてみましょう。

https://www.whisper.jp/article-top/incontinence-training-for-women/pelvic-floor-muscle-training/

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(プロフィール)

泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生

1983年、東京女子医科大学 医学部医学科卒業。同大泌尿器科等を経て、2011年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会認定医、ロボット支援手術認定医、日本排尿機能学会理事、日本女性骨盤底医学会理事、日本骨盤臓器脱手術学会理事、日本性機能学会理事、日本間質性膀胱炎研究会幹事 ほか。