監修: 泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生
【医師監修】若くても起こり得る女性の尿漏れの種類・症状・原因・対策法を解説
「咳やくしゃみをしたら、少しもれたかも!?」「急にトイレに行きたくなって、がまんできなかった」など、UI(尿もれ)は女性にとって身近な悩みのひとつです。このような症状は中高年世代に限らず、実は妊娠・出産の経験がない20歳代でも起こり得るということをご存知でしょうか。
「恥ずかしいから誰にも相談できない…」とひとりで悩まず、若くても起きるUI(尿もれ)の原因を知り、早めの対策を心がけましょう。
若くても起きるUI(尿もれ)の種類とそれぞれの症状・原因
UI(尿もれ)は、医学的には「尿失禁」といい、国際尿禁制学会では、「蓄尿相(膀胱に尿が貯留していく段階)中に経験する不随意な尿もれ」と定義しています。つまり、自分の意思と関係なく尿が漏れることです。尿失禁には次の種類があります。
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは、重い物を持ち上げる、咳やくしゃみをする、走ったり飛んだりするなどの行為でお腹に力がかかることで生じる尿漏れです。骨盤底筋群という筋肉がゆるむことで起こります。
骨盤底筋群がゆるむ原因は、妊娠・出産や加齢などとされています。また、重い物を持つ、排便時に強くいきむ、ぜんそくや喫煙で繰り返し咳き込むなどの行為も、骨盤底筋群にダメージを与えるので、結果的に腹圧性尿失禁が起こりやすくなるといわれています。
ほかに、特有の状況で起こるUI(尿もれ)として,たとえば大笑いをしたときに起こる尿失禁(笑い失禁)や性交中の尿失禁(性的興奮性尿失禁、性的活動性尿失禁、クライマックス尿失禁)などがあります。
★腹圧性尿失禁についてはこちらの記事もぜひお読みください。
https://www.whisper.jp/article-top/stress-incontinence/stress-incontinence/
切迫性尿失禁
切迫性尿失禁とは、急に排尿したくなり、我慢できずに漏れ出てしまう尿失禁です。排尿は、脳からの指令によってコントロールされているのですが、脳血管障害をはじめとしたさまざまな疾患によってコントロールに支障をきたすと、切迫性尿失禁が生じることがあります。また、脊髄の障害も切迫性尿失禁の原因となります。さらに、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮し、尿漏れするケースも少なくありません。40歳以上で年齢とともに増えますが、若い人でも起こり得ます。
★切迫性尿失禁についてはこちらの記事もぜひお読みください。
https://www.whisper.jp/article-top/urge-incontinence/urge-incontinence/
溢流(いつりゅう)性尿失禁
溢流性尿失禁は、自分の意思で尿を出すことができずに、尿が少しずつ漏れ出てしまう尿失禁です。原因には、膀胱から尿道出口への尿の通過が妨げられる(通過障害)場合と、膀胱がうまく収縮できない(膀胱収縮障害)場合があります。
通過障害が起きる代表的な原因は男性の前立腺肥大症です。
膀胱収縮障害が起きるおもな原因は、糖尿病による末梢神経障害や骨盤内手術の術後があります。
女性では子宮がんの拡大手術後に、膀胱周囲の神経が損傷し、膀胱の機能が低下することによって起きることがあります。ただし、子宮がんの手術後に必ず溢流性尿失禁が起きるわけではありません。
軽い膀胱収縮障害では、尿の勢いが低下する、軽い腹圧をかけないと尿が出ないなどの症状ですみますが、知覚神経が損なわれているため残尿感も感じないことが多く、気づかれにくいのが特徴です。
腹圧をかけて排尿することは膀胱に高圧がかかり、長年の間にかえって膀胱を傷めることとなり、ついには出た尿量より残尿量の方が多くなり、溢流性尿失禁が起きるようになります。なお、子宮がんのうち子宮頸がんを発症しやすい年齢は、20歳代後半~40歳代です。
★溢流性尿失禁についてはこちらの記事もぜひお読みください。
https://www.whisper.jp/article-top/urinary-incontinence-faq/overflow-incontinence/
機能性尿失禁
機能障害性尿失禁(機能性尿失禁)は、排尿機能に異常がないにもかかわらず、身体的運動機能障害(例えば整形外科的、神経学的)や精神機能障害(認知機能障害など)によって生じる尿失禁です。例えば、歩行障害によってトイレにたどり着くまでに時間がかかり、尿漏れしてしまうケースがあります。20歳代でも、機能性尿失禁になる可能性はありますが、高齢者と比べると頻度は多くありません。
20歳代で尿もれするのは恥ずかしいこと?
前述したように、UI(尿もれ)は年齢を問わず起こり得ます。周りの人に症状を訴える人がいないから自分だけが悩んでいると思っている方もいるのではないでしょうか。他の人も悩んでいることであり、恥ずかしがることもありません。
また、あまり気にしすぎると、心因性頻尿といってトイレに何回も行くようになる心配もあります。UI(尿もれ)に対する不安を少しでも和らげるために、対策を始めることが大切です。
UI(尿もれ)の対策を紹介
UI(尿もれ)は、セルフケアで改善が期待できる場合とできない場合があります。UI(尿もれ)の対策について詳しく見ていきましょう。
骨盤底筋トレーニングを行う
軽度の腹圧性尿失禁であれば、骨盤底筋トレーニングで骨盤底筋群を鍛えることで改善が期待できます。また、急に太った方、肥満の方は、体重を減らすことで症状が改善する場合があります。そのほかのUI(尿もれ)については、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。
★骨盤底筋トレーニングについてはこちらの記事もぜひお読みください。
https://www.whisper.jp/article-top/incontinence-training-for-women/pelvic-floor-muscle-training/
若い方にもぴったりの尿もれライナーやパッドを上手に使いましょう
UI(尿もれ)が気になる方は若い方でも使いやすい尿もれライナーや尿もれパッドの活用もおすすめです。UI(尿もれ)は、いつ起きるか予想することが難しいものです。尿もれライナーや尿もれパッドを使用することが安心に繋がるかもしれません。
UI(尿もれ)専用品を活用しよう
ウィスパーのUI(尿もれ)専用品なら、ライナータイプやナプキンタイプ、パッドタイプなど、20代にもマッチする幅広い商品をラインナップ。花をモチーフにしたおしゃれなデザインは、生理用品を買うような気持ちで気軽に購入できますよ♪
………………………………………………………………………………………………
(プロフィール)
泌尿器科医 東京女子医科大学附属足立医療センター 骨盤底機能再建診療部 泌尿器科 教授 巴 ひかる先生
1983年、東京女子医科大学 医学部医学科卒業。同大泌尿器科等を経て、2011年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本排尿機能学会認定医、ロボット支援手術認定医、日本排尿機能学会理事、日本女性骨盤底医学会理事、日本骨盤臓器脱手術学会理事、日本性機能学会理事、日本間質性膀胱炎研究会幹事 ほか。